夜の8時、閉店間際の薬局にすべり込むように入って、
なんとか必要な品を手に入れることができた。その帰り道のこと。
川沿いの暗い道を車で走っていると、ふと、ぼんやりと光る小さな灯りが目に入った。
蛍だった。
優しく点滅を繰り返しながら、静かに宙を漂う姿。
久しぶりに見る蛍に、思わず車を止めて見入ってしまった。
デイサービスに通うご利用者様が、
かつて川でイワナをザルですくえたと話していたことを思い出す。
その頃には、きっと蛍も、もっとたくさんいたのだろう。
かつて豊かだった自然の片鱗を、ほんの一瞬垣間見たようで、
胸が温かくなる。
蛍の光が、過ぎ去った時代を静かに照らしていた。